◆ 『 乱れる 』 1964年 日本
世の中の猪口才な悲恋ドラマなど不要。 この作品さえあればいい。
社会の利益競争に見え隠れする理不尽な乱れ、
世間体や慎ましさへの意識に、身動きが取れなくなったゆえの乱れ、
そして、男と女の狭間に行き来する、例え難き想いの乱れ。
自分が「存在すること」が、ここまで苦しそうな映画を、私は他に知らない。
成瀬巳喜男の監督作品は過去に『浮雲』と『めし』、『流れる』を拝見したが、
そのどれよりも「強い何か」が、心を衝き押してくるような作品だった。
胸を掻き毟るような最後の展開が、私の心と呼吸を乱した。
そして「終」の文字が、“その時に出てくる”ことじたいが衝撃であり、
そこには感動の、その先にあるような、凄まじい感覚を呼び起こす。
本年も多くの映画を拝見することになるかと思うが、
この作品を年明け最初の映画として選んでよかったと、心から思う。
◆ 『 俺たちダンクシューター 』 2008年 アメリカ
ラヴ・ミー・セクシー!(笑)
私のラジオ番組の第三金曜アシスタントを2010年まで務められていた
紅月ノリコ様が、かつて何度も番組に持参したCDが、この映画のサントラ盤。
彼女自身はCDの内容(R&B・ソウルの名演ぞろい)がお気に入りで、
しかし映画そのものは未見だった模様。 私はCDのインナーの写真などに
あまりのバカ度を察知し、どんなにアホな映画なのかと楽しみで楽しみでw
ついに拝見し、期待を裏切らないバカさ加減で、それが何より嬉しかったwww
ダメなチームが再生・復活にむけ奮起するという超定番型ストーリーだが、
この際どうでもいいじゃないか、内容なんてwww
俺たちニュースキャスター (2004)
俺たちフィギュアスケーター (2007)
俺たちダンクシューター (2008)
俺たちステップ・ブラザース (2008) と、
ウィル・フェレル主演の“俺たち”シリーズが実はいくつもあるという事実w
年末年始のドサクサに拝見するにはもってこいの、
どうしようもないくだらなさに満ち溢れた痛快作。なぜか妙に憎めないのは、
楽曲として最高なテーマ曲「ラヴ・ミー・セクシー」のせいだろうwww
◆ 『 オテサーネク 〜妄想の子供 』 2000年 チェコ
これは言葉を失う、すごい芸術だった。
驚きというか、ショックで脳が溶け出してしまいそうな感覚に陥った。
動揺は避けられない、愛情の歪みを美しいほど不気味に描いた芸術品。
チェコのクレイアニメは、短編であればマーリア・プロハースコヴァーや、
アウレル・クリムトなどの近年の秀作が好きだが、大御所シュルレアリストの
ヤン・シュヴァンクマイエルの作品は、長編・短編ともに未見だった。
この『オテサーネク』は実写ドラマとアニメの合成で組み立てられた作品。
「完璧なものは好きじゃない」との理由で、CGは一切まったく利用せず、
アニメ部分はすべてストップモーションでの撮影がされている。
ゆえに芸術が躍動している。 芸術に、血流と脈拍が感じられる。
他の監督には見られない独特な視点→映像化のセンスと作業過程は、
同時に拝見したドキュメンタリー『シュヴァンクマイエルのキメラ的世界』にて、
その絶えることのない創造性の一片を窺い知ることができる。
この監督の作品に触れた後、ふと周囲を見渡すと、誰もが、
身の回りの物体にも命が宿っていることが確認できるだろう。
PCの横に置いてあるコーヒーカップは踊りだし、
積み上げてある書籍や雑誌は鳥のように羽ばたき、
今こうして叩いているキーボードが、私の手を、噛み砕き始めるのだ。
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